『「iPad教育」は普通の教科書より有効』って、ホント?

タイトルの記事はMSN産経より。

・『「iPad教育」は普通の教科書より有効

ちょっと待って欲しい。
この手の記事にありがちなのだが、比較の詳細が書かれていない。鵜呑みにはできませんね。

「ICT活用には教育効果がある」という統計を見たことありませんか? これ、実は一種のマジック。 どこが?と思われるかもしれませんが、肝心なのはデジタル教材(コンテンツ)の方が紙の教科書よりレベルが高いってことなんです。

現在、デジタル教材市場には各コンテンツプロバイダがこぞって自慢の製品を投入しています。もちろん、おもしろく、分かりやすい工夫が随所に。
つまり、優劣の構造は「デジタルvsアナログ」ではなく、「気鋭のコンテンツ(デジタル教材)vs 検定を通すためのコンテンツ(紙の教科書)」ということなのです。

デジタル教材を使うことで自ずとハイレベルの教材を与えられていたというのがタネ。
だから、対照実験を行うなら従来の紙教科書と新たに書き起こした図解たっぷり(マンガも)の紙教科書で比較しなければならない、ということ。おそらく後者の方が教育効果が高いという結果になるでしょう。

例えばこんなくだりが記事にあります。
『「生徒たちは、よりパーソナルな形で機器とのやり取りを行っている。参加度がより高い」と、アメリア・アーハート中学のコールマン・ケルズ校長は語っている。「学習が理解しやすい固まりで行われて行くので、学習範囲が莫大で手強いという感じを持たなくてすむ」と、デジタル・マーケティング・エージェンシーである米Organic社のマリータ・スカーフィ最高経営責任者(CEO)は語る。』

これは「インタラクティブ性」などデジタルの優位性も含まれていますが、教科書設計の問題に起因する部分もないですか?
iPadを手渡された場合、コンテンツの全体量は見えない。見えている部分に集中しながら先へ進めていく。一方、分厚い教科書を手渡される。その重量におののきながらページをぱらぱらめくると、自分にはとても理解できないような単語や記号がずらずらと目に飛び込んできて、気持ちをくじかれてしまう・・・。
これはやや極端な描写ですが、従来型の紙の教科書には教師のサポートがないと進められない感があると思います。たとえ、ドラえもんや鉄腕アトムがナビゲートしてくれるにしても。

なので、このiPadの記事もコンテンツを見ないことには、「iPadに効果があったのか」どうか分かりません。

もうひとつ、「効果をはかる」ことの難しさも指摘しておきましょう。
子どもたちの学習効果を「何で」はかります? 客観テスト? だとしたらテスト対策の演習をたくさんした方が有利ですが、そうなると教科書の優位性は?

少々意地の悪い事を書いてしまったかもしれません。が、私自身はiPadのようなデバイスが大好きな人間ですから期待している部分が多分にあるのです。

だからこそ客観的にその教育効果を見つめたいと思っています。

現場からの発信

私も現場には入っている方だと思いますが、より多くの現場を踏み、より多くの優れた事例に接したい、といつも思っています。

それがかなわない時は、ネット検索で、更新された記事が無いか調べてみます。

今日もこんな記事に出会いました。

携帯端末を使った授業(みやざき教育支援協議会)

いろいろ面白いことをされていて、こういうのを読むとこっちまでワクワクしてきます(笑)

でもポイントはここ。
『授業で使う分子模型の立体表示moieccule、小テスト用のタイマー表示、選択肢による正誤問題、元素図鑑の動画や反転表示など、確かに生徒たちが興味を引きそうなコンテンツが満載でした。実際の授業では、導入部などの10分程度で見せているということです。』

これだけ色々なコンテンツを用意しながら、導入部の10分程度の活用に絞って活用されている。

狙いすましてピンポイントで使う。これが肝です。

授業の組み立てに解は幾つもあるんですが、同じ意見を見つけると嬉しくなりますね。