公開授業、当日

 ついにこの日が来ました。

 あまりにも多くのことがあり、このエントリで書き尽くすことはできないので個々のエピソード等はまた日を改めて。
 得るものの大きい授業や講演がありました。まずは昨日の記事を読んで頂いて気になってらっしゃる方へ報告したいと思います。

 いきなりハプニングがありました。
 朝、顔を合わせたS先生、昨日あれからまた1人で操作確認をしたらしいのですが、そのとき「ピロピロがうまくいかなかった」と仰るのです。どうも表示されないファイルがある?らしい。 ※ピロピロとは「エアロフリップ」のこと。
 そこで教室の空き時間にパソコンを起動し直し、確認したところ問題なく動作して一安心。

 公開授業は5、6限で行われるので、午前中は机を移動したり、機器の動作チェックをしたりと準備に追われました。
 おもしろかったのは、リモートサイエンスラボの準備。分教室とネット回線で結んで実験をするのですが、今回用いるのは「二酸化炭素濃度測定器」。植物の呼吸を実験で確かめます。
 かなり高感度な製品のようで、ガスストーブを焚くと二酸化炭素濃度が上昇するのを検知してしまうとのこと。本日のK市は雪の舞う寒空でしたが、途中からストーブを消し窓を開けて換気しながらの作業となりましたよ。

 さて5時間目。S先生の授業がスタートしました。授業前の仕込みはバッチリ、あとはうまく操作して頂くだけです。
 全部で5枚の画像があるのですが、最初の2枚はO.K.
 画像切りかえの度に「ピロピロ」言うものですから、生徒もつい笑ってしまいます。
 3枚目になり、あれれ? 画面が代わりません(汗)。キー操作は覚えられたので間違うはずはないのですが、私が確認しても同様に「ピロピロ(フリップ)」しません。マーフィーの法則発動(苦笑)。
 仕方がないので、都度メニューバーから必要な画像を私が開き、残りの授業を進めて頂きました。

 授業後。
 私「おつかれさまでした。でも、ちょっと残念でしたね。」
 S先生「いやあ、授業ができたからよかったよ。全く画像が見られなかったら口で説明するのはしんどかったけど。」
 あまり意に介していない口調に安堵しました。

 ちなみにS先生は、授業巧者です。こなれたベテランの味はみごと。
 本日の単元は中2の歴史、それも日中戦争あたりの込み入ったところ。複雑な勢力を家族や友人関係に例えながら納得感のある授業をされていました。生徒を前に出させ、IWBに映し出した毛沢東と蒋介石の顔に落書きをさせた時にはぶっ飛びましたけど(笑)
 そこは、この学校ならではのICT利活用の意味があるのです(昨日のエントリ参照のこと)。

 S先生のような先生に、本気でICT活用に取り組んで頂けたら、と思わずにはいられません。
 手書きの自作プリントを大量に保有されており、今日はそのうち2枚がIWBで表示されました(もちろん、ワークシートとして生徒にもプリント配布してます)。
 手持ちのアナログデータもそれほど手間をかけずに再利用できるのがIWBの利点のひとつですね。

 最後に、エアロフリップがフリーズする症状は昨日も起こり、再現性があります。パソコンの再起動で直りますが、StarBoardと併用し続けると出るような感じがあります。
 まあ、エアロフリップと併用する先生もあまりいらっしゃらないのですが(笑)、今後注意していきたいと思います。

公開授業の前日

 いよいよ明日となった公開授業。
今日は最終調整に現地入りしました。そこで思わぬ気づきを得ることができました。

 今までのエントリをご覧頂いている方は、2/17という日付とK市という情報から、私が特別支援学校のフューチャースクールで支援企画員をしてるんだ、と推察されていることと思います。ご明察。
 そこで、明日に向けた準備について、午前中に支援員から報告を受けました。

 彼の話によると、明日サポートが必要になりそうな先生がいる。そのS先生はIWBを使って、用意した画像を提示、切りかえ、拡大して書き込む、というオーソドックスなスタイルで授業をされるとか。
 ところが画像切りかえは、Windows のビューワーでカーソルキーで移動するのではなく、画像ごとにビューワーを起動しておき、複数ウィンドウを [Windowsキー]+[Tab]のショートカットで・・・そう、エアロフリップで切りかえたいと希望されている。

 これがパソコンの得意な先生なら「どうぞ、どうぞ」となるんですが、サポートが必要なS先生。
 ICT活用で画像切りかえは頑張る所じゃないし、授業で無理に多くの機能を使う必要はなく、むしろ公開授業なんだから失敗するリスクを減らした方がいいんじゃないか、と支援員にはアドバイスしました。

 さて、お昼休みを挟んでコラボノートを使うという別のクラスの操作確認に立ち会いました。
 コラボノートの画面をIWBに映して「これでは字が小さくて読めないね」とおっしゃるM先生。
 「各生徒のタブレットパソコンには同じ画面が表示されていますから、IWBで読む必要はないんじゃないでしょうか」と私。
 「う〜ん、分教室でIWBの大きい画面を見て、子どもが喜んでくれれば、と思ってね」
 私の心の中で、形にはならない、小さな光が弾けました。

 さて放課後。S先生が支援員を呼びに来ました。なんでも、明日使用するファイルが消えてしまったとか。
 私も支援員に同行して教室におじゃましました。
 これが後から考えると偶然とは思えないトラブルでした。

 支援員さんが、ファイルをバックアップから復元し、5枚の絵をそれぞれビューワーで起動して、さあエアロ! ・・・なぜか不調でパソコンを再起動(笑)
 気を取り直し、再起動後にエアロ!

 今度は成功です。S先生は嬉しそうに画像が整列し、ダンスする様をながめて「これだよ、これ! ピロピロピロ・・・」

 その模様を眺めて昼間の出来事がフラッシュバックし、S先生がエアロにこだわった理由がようやく閃きました。

 特別支援学校、特に分教室(=病院内)には病気で長期入院している子どもがいます。
 中には重篤な病状の子もいて、つらい治療や孤独に耐えている。
 子どもたちの目が輝くといいね。笑顔が見られるといいね。
 そんな言葉を以前他の先生から聞いたことを思いだしました。

 いわゆる一般校のみを見てきた私にとって、ICT機器は一般の教具であり、特別扱いはせず、収まるべきところに収まってその役目を果たせばいいし、まずはそこを先生方にご理解いただきたいという気持ちが強かったのでした。

 しかし、授業を受ける子どものタイプは様々です。今回のように、ちょっとした提示の仕方で小粋なサプライズを演出し、それが一瞬でも子どもたちの目の輝き、笑顔に繋がるなら、悪いはずがありません。授業が滞ってしまったら・・・その時はその時です(笑)

 まだまだ修業が足りませんね、ああ、恥ずかしい。
 でも、今気づいてよかった。今日はすばらしい日となりました。ありがとうございます!

 明日は全力でサポートいたします。

電子黒板、NHKの報道

 今朝、6:00台のNHKニュースで電子黒板(IWB)を取り上げていましたね。

 概ね客観的な報道で、先生の「子どもたちの顔が自然と上がる」といったIWB利活用において見過ごされがちなポイントも拾っていたのはお手柄。またIWBを使った子どもたちの発表場面や、現場の先生の対照的な意見も上手に拾っていました。

 一方でいくつか課題も感じました。

 まずIWBの機能とデジタルコンテンツ/機器の機能が区別されていないこと。
 例えば国語のデジタル教科書を取り上げていましたが、「筆順のアニメーション」「本文の読み上げ機能」はデジタル教科書のもの。そして、どちらかといえばこれらの機能は一斉学習というよりは、フューチャースクールのように各児童に端末を配布し、そこで個人の習得度に応じて活用したい機能。筆順の分からない漢字って児童ごとに違いますし、一斉指導なら先生が行えばいいわけです。
 なお、ICT機器の誘因力というか、子どもたちの視線を集める力に言及する方もいますが、ICT機器を日常的に使い続けていく中で魔法は弱まっていきます。逆に、いつまでもそこに頼らなければならないなら先生の力量を問われても仕方ないでしょう。

 次にIWBのみを「黒板」として取り上げたこと。
 現場を見ないとなかなか伝わらないのですが、IWBは黒板の板書機能を補完するもので黒板に代わるものではありません。現状では、IWBで動画やコンテンツによる説明・デジタル教科書の投影を行い、ノートに残す内容はきっちり板書する、という「両面使い」が一般的であるように見受けられます。
 ここをスキップして「デジタルコンテンツを使うことで効率的に授業を進めることができます」なんて言うから、デジタルアレルギーを持つ方々の不要の批判を買うことになるわけです。

 とはいえ、一般の方の視線はこうなんだろうなと再確認するよい機会になりました。

StarBoardの電子ペン

 今日はY市の中学校へ、ICT支援員研修の視察に伺いました。
 いつもなら、研修を行う立場ですが今回はいろいろありまして、オブザーバー参加。お手並み拝見といったところです。

 支援員さんは3名、本日のメニューはIWB(日立 StarBoard)と実物投影機(書画カメラ)です。

 StarBoardはよくあるプラズマディスプレイタイプではなく、単焦点プロジェクタ型です。
 大きいし、書きやすく、まぶしくない(輝度が低い)ので私は気に入っていますが、唯一の弱点は明るい室内では昼あんどん状態になること。まあ、これはプロジェクタタイプなので致し方ありません。

↓写真では欠けてますが、上部にプロジェクタ本体がついています↓

 StarBoardを使う上で、いくつか注意があるんですが、インストラクターの方が触れなかったので、つい口を出してしまいました。曰く、
「電子ペンのフタが壊れやすいので注意して下さいね!」

 余計なことしちゃいましたかね〜、最後の方でちょこっと「授業の構成」について説明したんですが、その時電子ペンを落としてしまいまして・・・みごとフタは真っ二つに! 実践してしまいました。ああ、ゴメンナサイ!

 研修の方は、支援員のみなさんも熱心にIWB、実物投影機について質問をし、白熱したやりとりで予定時間を1時間ほどオーバーして終了。
 実りもあったのですが、課題も見えた研修でした。
 さてさてどうしましょう? というのが現在の心境です。

2/10セミナーのトピックス

 2/10に行われたセミナーで個人的に気になったトピックスをピックアップします。

【パネルディスカッションより】
[中川一史先生]
・デジタルコンテンツの活用で、先生方の授業準備(ワークシート)作成の効率化が図られているケースも

→私としてはノーチェックだった分野。過去の塾講師経験から自分の担任の生徒向けに(そのまま)使えるような教材はなかった印象が強い。例えば、バーコードシステムでドリルアップ・ドリルダウンを自動化していたのがウリの某システムも(現在のコンテンツがどう進化しているかは知りませんが)、当時は「使えないシステム」という判断で採用を見送った経緯もあります。
 要は共通テンプレートがあって、標準化されているものはそれなりに評価もされているのでしょうけど、個々の先生の教え方・指導法と会わない部分が必ずあり、そのすり合わせをどうするのか、という問題。
 だからワークシートについても、教科書に付属してくるものを先生方が自分のクラス向けにアレンジするという認識でいたので、上記の中川先生の発言には「へえー」という感じ。ただ、中川先生は既存のデジタルコンテンツを「そのまま使う」とは仰っていない部分がミソで、「作成の効率化」と仰った。
 このあたり、今後意識して取材します。

[石狩市紅南小学校M先生]
・(フューチャースクールのシステムを)2年間使って感じたことは、「無理をしない!」こと。すべてをICTに置き換えるのではなく、一部をICTに置き換える→「便利」「わかりやすい」「効率的」「感動的」

 M先生の授業には何度もおじゃましており、非常にうまくICTを使いこなしておられる印象。発表を聞いていても「わが意を得たり」と再確認することが多かったです。ただ、「感動的」という言葉は新鮮。
 毎回、子どもたちを感動させるような準備は持続不可能だとしても、要所要所で使うことで従来の授業スタイルにはない感動を映像・双方向性・協働学習を通じて行うことは大切だと再認識。
 長く使って慣れてしまうことで、真っ先に失われてしまうものが「感動」だから。
 逆に、ICT利活用の入り口が「感動」であるのは普通で、それだから「感動」によりかかったままの授業設計はよろしくないと思うわけです。

[宮古島市下地中学校M校長]
※この2/1から取り組みを始められたばかりということで、ここに至る背景等を発表されました。
・(これまでの課題として)年度途中の採択で今年度の年間指導計画及び行事計画に変更が多くなっている

 上記のような苦言を呈されていましたが、私もまったく同感です。
 年度が変わってからの採択、予算付けとなる事情も分からなくはないですが、それはあくまでも役所の論理。受検を控えた中3のいる中学校で2/1にスタートして、果たして中3の子たちは恩恵を受けられるでしょうか。
 何度かこのブログエントリで取り上げているK市の学校も、システム導入が完了してから約1ヶ月で公開授業です。この準備期間の短さは、現場の先生方や児童生徒に想像以上に多大な負担を強いています。
 プロジェクトが多くの方々、関係各所の協力で成り立っていることは百も承知ですが、現場に対する理解がもう少しあってもいいように思います。

 以上、簡単ではありますが私の感想です(第一弾?)。

本日は学校ICTのセミナー

先日の学校訪問で風邪をもらったらしく、2日間休みをいただきました。ええ、インフルではありません。

さて今日は、情報教育対応教員研修全国セミナーという催しに、サテライトから参加します。

平成23年度 情報教育対応教員研修全国セミナー

トピックス等は後ほどアップしますね。

久々の授業支援

昨日のエントリで書いたように、ICT支援員がインフルで休みました。
代打というわけでもないんですが、今日は一コマ授業支援に入りました(微笑)。

実際、現場で動いてみて、気づきが何点かあったのは収穫です。

Microsoft Wordを使って、写真を貼り付け、メッセージを入れるという操作の授業だったのですが、児童端末のCM-1(関連エントリはこちら)には荷が重かったようです。
ポインタがくるくる回って待たされる子、フリーズと区別できないような状態になった子もいました。
作業があまりはかどらず、ちょっとかわいそうでした。
写真を貼るような重い操作は、今後パソコン室の高性能なノートPCでされた方がいいのでは、とアドバイスしました。
また、Wordの操作では図の貼り付けがデフォルトで行内になっているため、そのままでは写真を自由に移動できません。
スムーズな操作のために、デフォルト設定を前面などに変える必要性を感じました。

これから帰京しますが、鼻水が・・・インフルでないことを祈ってます!(笑)

もぞうしアプリ活用のヒント

 Sky株式会社が開発している「もぞうし」アプリ。フューチャースクール版Skymenuの協働教育の目玉とした開発された経緯があります。現在、最新版のSkymenuには標準アプリとして同梱されているのですね。

 このアプリに初めて触れた時、非常に大きな可能性を感じると同時に「どんな使い方を提案すればいい?」と悩んだことを覚えています。

 さて、今日たまたま朝日新聞を読んでいてひとつのパズルが目に留まりました。
「漢字あぶり出し」というそのパズルは、縦・横の指定された行列内の漢字を設問に従って正しく塗りつぶしていくと漢字が浮かび上がるというもの。


 (2012/2/4 朝日新聞)

 クイズの内容自体は大人にとってはやや物足りないかもしれませんが、これ小学生の漢字語彙力を養うにはぴったり。
 そして、あるアイディアが浮かびました。そう、「もぞうし」アプリとの連携です。

 「もぞうし」アプリにはレイヤー機能があり、先生が用意する「したじ(下地)」と児童生徒が作業する「もぞうし」は別々の紙(というかシート)になっています。ですから、児童生徒がいくら自分のシートに書き込もうが消そうが「したじ」にはまったく影響ないんですね。つまり、子どもたちはコンピュータ操作の持つ利点、試行錯誤を思う存分試すことができます。

 これ、使える!と思うのは私だけではないと思います。
例えば大人気の「数独」というパズルがありますが、あれでもイケます。要は、試行錯誤が必要ではあるが緻密な筆写を必要としない学習操作であればいいということです。

 ちなみにアプリもSkymenuの「もぞうし」に限定せず、

(1)先生と児童生徒の作業レイヤーが区別できること
(2)用意した下書き(テンプレート)を簡単に児童に配布できること
(3)できれば児童の作業画面をIWBで共有できること

という要件さえ満たせば活用できます。

 すでに実践されている先生方もいらっしゃると思いますが、備忘録を兼ねて記事にしてみました。 

ICT支援員の成長

先日訪問したI市の小学校でうれしい話を聞きました。

私たちの会社から採用になった支援員について、情報担当の先生から「Kさんは成長したよ。最初は先生方も機器の操作方法を聞いていたのが、最近は『こんなことを授業でやりたいんだけど、何かいい方法ある?』って聞き方になってきた。」と。

うれしいですね~。

「教科書を教えるな、教科書で教えろ」という有名な言葉がありますが、これに倣って言えば、
「ICTを教えるな、ICTで(何ができるか)教えろ」というレベルに達しつつある、ということですから。

彼女はここまで来るのに8ヶ月。
まだまだ伸びざかりです。

私も現状にあぐらをかくことなく、知見を深めて彼女の成長にさらに一役買いたいですね。

ICT支援員に一番必要なスキル

 現時点では私の中で結論が出ていることですが、今日同席したICT支援員研修で再確認しました。

 「ICT支援員に一番必要なのは、ITスキルではなくコミュニケーションスキル」

 やはり、学校現場で先生方と円滑にコミュニケーションを取れることが第一です。次のステップとして、ICTに関連した様々な相談を先生方から持ちかけられるようになります。
 ITスキルはそれこそOJTで、現場で身に付けることが可能です。しかし、コミュニケーションスキルは難しい。

 ただ、これには「現時点で」と注釈をつけておきましょう。
 というのも、過去のエントリでも触れましたが、現在ICT支援員という職業は特別な資格も必要ない代わりに給与面でも恵まれている訳ではなく、なにより有期雇用であるからです。
 残念ながらそれなりの資格、スキルを持っている人材が敬遠する職となってしまっています。

 アンケート調査によっても、多くの教員がICT支援員の必要性を認めています。将来的に教員免許に相当する「ICT支援員認定」といった資格制度が発足し、職業としての地位を確立することも大いに考えられます。

 ちょっと考えるとハードルが上がるように見えますが、これが本来の、学校職員としてのICT支援員の姿ではないでしょうか。今はまだまだ過渡期にあると言えるでしょう。